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カードからローカードヘ変化し、足幅(歩隔)がしだいに狭められていくこと等を報告している。
しかし、筋の働きから歩行安定度の指標をみたものは非常に少ない7、9、10)岡本ら9)は、離床期、特に着床前の腓腹筋の放電様相より歩行の安定度を導き、新生児・乳児原始歩行に適用した結果、生後1〜3ヵ月頃から不安定さを感じ始め、自己防御機構である保護伸展反射がかなり早い時期からみられることを推定している。
今回は、従来より行ってきた乳幼児歩行から成人歩行の筋電図的解析結果3、6 、10、12)を再検討し、離床期だけでなく接床期についても、歩行の安定度を推定できる指標を足関節筋(前脛骨筋・腓腹筋)の放電様相から導き、それを1歳前後の独立歩行習得過程に適応し、歩行習得初期の特徴をバランスの面から検討を加えた。

研究方法

被験者は独立歩行がはじめて成功した生後10ヵ月の女児1名を対象に、走りが可能になる歩行習得4〜5ヵ月頃までほぼ2〜4週間隔で、左右の足関節筋(前脛骨筋:TibialisAnterior、腓腹筋:Latera1Gastrocnemius)から通常の皮膚表面誘導法で縦断的に筋電図を記録した。動作は、離床期・接床期を区分するため足底スイッチを用い、バソグラムの記録とビデオカメラでフレームシグナル(60コマ/秒)を筋電図と同時記録した。
また、歩行の安定度を推定する指標を導くため、これまで得られた乳幼児歩行から成人歩行における離床期・接床期の足関節筋(前脛骨筋・腓腹筋)の筋電図データー3、6、12)を再検討した。

研究結果ならびに考察

成人歩行は安定した歩行であり、独立歩行開始期の乳幼児歩行は非常に不安定な歩行であると考える。そこで、歩行安定度の指標を導くため成人歩行、乳幼児歩行を中心に動作・筋電図の面から検討を加えた。

I. 歩行の安定度を推定する指標の検討

1安定した歩行パターン

1)成人型歩行
図1は、成人の日常歩行のフォームと足関節筋の筋電図を示している。
筋電図上段の黒い横棒は、足底が床についている接床期(stancephase)、白い横棒は、足底が床から離れている離床期(swingPhase)を示している。
足関節筋の筋電図パターゾ4、6、8、12は、着床前に腓腹筋に放電はみられず、拮抗筋の前脛骨筋に強い集中した放電(burst)がみられた。この前脛骨筋のburstは、強い足背屈を保ち、踵着地がなされたことを示している。また、着地直後から離床寸前の接床期の間(以後、接床期と略す)、前脛骨筋に強い放電がみられず、踵押し上げ(pushoff)に働く腓腹筋に強い放電が認められた。これらが、安定した成人型歩行の大きな特徴と考えられる。

078-1.gif

図1成人型歩行の足関節筋の筋電図6)。

筋電図上段の黒い横棒は接床期(StanCephase)、白い横棒は離床期(swingPhase)を示している。
HC:Hee1_Contact,FF:Foot−Flat,HO:HeeI−Off,T0:Toe_Off
着床前(\)、腓腹筋に放電がみられず、前脛骨筋に強い放電が認められ、強い足背屈で踵着地がなされた。着床直後から離床寸前の接床期の間(/)、前脛骨筋に放電がみられず、踵押し上げのため腓腹筋に強い放電がみられた。これらが成人型歩行の大きな特徴である。

 

 

 

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